パルスジェットメス(PJM:下垂体腫瘍)
パルスジェットメスは、短パルス(10us)のホルミウムヤグ(Ho:YAG)レーザーを用いた「誘発液体ジェット」によって、生体組織破砕を行う手術装置です。
水で満たされたアプリケータ内の膨張室で、ファイバー端からレーザー照射することにより、水の気化膨張により内圧が増大し、先端ノズルから液体ジェットを噴射します。
この液体ジェットは微量ながら、秒速数10mまで加速し、組織に照射すると破砕作用を持ちます。
熱作用を伴わない「液体ジェット組織破砕」による、組織の切除が可能です。組織の機械的弾性により破砕作用が異なるため、弾性率が大きい血管は残存し、弾性差率により選択的破砕が可能です。
2004年より開発を開始し、試作機での経蝶骨的下垂体切除に関して、多施設での臨床試験を完了しています。
共同開発機関:
東北大学(脳外科/富永研究室)、東京大学、
産業技術総合研究所、東京電機大学
光学干渉断層計(OCT:眼底断層撮影)
フェムト秒(モードロック発振)レーザーによるSC(スーパーコンティニュアム)光源を用いた、スペクトル・ドメイン型のOCTです。
失明へ進展する「緑内障」「加齢黄斑変性症」の原因解明のため、眼底脈絡膜(毛細血管網)を3D画像で描出することを目的として、開発計画されました。
眼底脈絡膜の水平面画像が捉えられれば、失明の3大要因の内、「緑内障」「加齢黄斑変性症」の原因究明と予防に寄与する可能性があります。
従来のSLD(高輝度ルミネッセントダイオード)を用いたOCT装置では、分解能・固視微動内での計測が難しかったため、これらの問題に対し十分に実用に耐えうるSC光源を開発しました。
眼底脈絡膜の水平面画像を捉えるためには、Bスキャン(眼底断層画像)を眼底面内に重ねた「3Dデータ」の取得が必要です。各Bスキャンが離散しないように高速で計測する必要があり、これに対しSC光源と高速データ処理システムがこの画像を描出できる可能性があります。
2013年より開発を開始し、2015年に試作機が完成しましたが、眼底後方散乱光強度の不足、分光カメラの性能(低感度・高ノイズ)の問題から、波長帯の変更、分光カメラの換装を課題とし、現在は自社開発を継続しています。
共同開発機関:
埼玉医科大学(眼科)、株式会社イナミ
レーザー衝撃波アブレーション(LSA:頻脈性不整脈)
不整脈の原因となる心臓の異常伝導経路を電気生理学的に検査し、レーザー誘導衝撃波を利用して心筋深部、あるいは心外膜側に不整脈気質が存在し、他の治療が奏功しない心室性期外収縮、心室頻拍通常型心房粗動の原因となる異常伝導経路を選択的に焼灼するシステムです。
従来、アブレーションには高周波電気による「オーム加熱」を用いていましたが、表層から熱反応するため、心内膜損傷・血栓発生・深部作用不十分等の問題がありました。
本装置においては、カテーテル先端で、衝撃波を発生させ、心筋深部に集束させることができるため、副作用に対して有利になります。
当社ではレーザー発振装置の開発を担当し、2004年より開発を開始、2019年に治験機を試作しました。
2021年より、サウンドウェーブイノベーション株式会社が中核となり、2025年の上市を目指して治験を開始する予定です。
共同開発機関:
東北大学(循環器内科)、東北大学 流体科学研究所、
サウンドウェーブイノベーション株式会社、株式会社カネカ
多チャンネルレーザー温熱治療装置(LITT:悪性脳腫瘍)
MRIを用いた3D温度マッピング(MRT)下で、レーザー照射による腫瘍の温熱治療装置です。脳腫瘍を温熱治療させるもので、治療には病変部に挿入する「アプリケータ」を用います。
この「多チャンネルアプリケータ」は出射点・出射方向が異なる複数の細径側射ファイバを内装しており、この各ファイバーに個別に接続された「多チャンネルレーザー発振装置」により、非対称形状の腫瘍組織に対応して、発振条件をAI制御します。
海外では、1ch(1つのアプリケータに1台のレーザーを繋げる)で出力制御を行っていますが、当社では3chの接続・制御に成功しました。
今後、さらにチャンネル数を拡張し、最大12chの接続・制御を目指しています。
本システムは、臨床試験・治験を経て、2026年に上市を予定しています。
共同開発機関:
東海大学(脳神経外科/松前光紀教授)、
産業技術総合研究所、東京電機大学、ミズホ株式会社